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経営法務 英文契約カンペ

令和3〜7年度の実問題(過去問コーパス)を全数走査して作成|読了10分|使う順番:法務の初見計測を終えてから読む(先に読むと素の実力が測れない)
結論:捨て問にしてはいけない。ただし英語力は1ミリも要らない。
この問題の正体は「英文契約の条項タイプを知っているか」のテストであって、英語の読解試験ではありません。頻出条項は実質9個。選択肢は日本語か、条項名の英単語1語です。9個の型を10分で入れれば、本番で4〜8点が拾えます。

1. まず出題の実態を知る令和3〜7年度・実測

5年分の出題実績
年度問数該当設問テーマ英文を読む必要
令和30問出題なし
令和42問設問19・20保証/補償/解除 + 再販売価格拘束19のみ(20は日本法)
令和52問設問18・19準拠法/仲裁 + 裁判vs仲裁18のみ(19は日本法)
令和61問設問20分離可能性条項(条項名を選ぶ)ほぼ不要
令和71問設問9準拠法/仲裁不要(選択肢は全部日本語)
8点分」は令和4・5の話で、直近2年は1問=約4点。ただし出ない年(令和3)もある。期待値としては4点前後だが、あなたの法務が55〜60圏なら合否を分ける重さがある。 最大の誤解は「英文セット=2問とも英語」。実際は「英文読解1問+関連する日本法知識1問」のペアで出る。令和4の2問目は再販売価格拘束(独禁法)、令和5の2問目は裁判vs仲裁。純粋に英文を読まないと解けない問題は、5年で実質3問だけ

2. 頻出条項カンペこれが本体。英単語ではなく「型」を覚える

A. 出題実績のある条項(優先度S)
条項名英語トリガー(これを見たら確定)中身実績
準拠法
Governing Law
shall be governed by and construed in accordance with the laws of ... 契約をどの国・州の法律で解釈するか 令5・令7
仲裁
Arbitration
finally resolved/settled by arbitration in ... in accordance with the Rules of ... 裁判ではなく仲裁機関で最終解決する 令5・令7
分離可能性
Severability
invalid, illegal or unenforceable ... the remaining provisions shall not be affected 一部の条項が無効でも、残りは生き残る 令6(正解)
完全合意
Entire Agreement
constitutes the entire agreement ... supersedes all prior ... この契約書が全て。口約束・過去の合意は無効 令6(選択肢)
不可抗力
Force Majeure
acts of God, war, beyond the reasonable control of ... 天災・戦争等では責任を負わない 令6(選択肢)
権利不放棄
No Waiver
failure to ... shall not be construed as a waiver 1回見逃しても権利を放棄したことにならない 令6(選択肢)
保証
Warranty
warrants that the Goods shall be free from defects in raw material and workmanship 材料・製造上の欠陥がないことを保証 令4
補償
Indemnification
shall indemnify and hold ... harmless from and against any and all liabilities 損害を肩代わりする。誰が誰を守るのかが勝負 令4(正解の鍵)
解除
Termination
If ... terminates this Agreement ... 解除の要件と、解除後の後始末 令4
B. 未出題だが出れば同じ形で問われる(優先度A・余力で)
条項名英語トリガー中身
裁判管轄 Jurisdictionexclusive jurisdiction of the ... court裁判をどこの裁判所でやるか(=仲裁とは別物)
秘密保持 Confidentialityshall keep confidential / shall not disclose知り得た情報を漏らさない
譲渡禁止 Assignmentshall not assign ... without prior written consent相手の同意なく契約上の地位を譲渡できない
存続条項 Survivalshall survive the termination契約が終わっても効力が残る条項
全部「誰が・誰に・何を・どうする」の4点だけ拾う。英文の細部は無視してよい。とくにSeller と Buyer のどちらが義務を負う側か——ここを取り違えると必ず落とす。
C. 3つだけは絶対に混同しない
 準拠法
Governing Law
裁判管轄
Jurisdiction
仲裁
Arbitration
決めることどの法律で判断するかどの裁判所でやるか裁判所を使わず仲裁機関で解決
目印governed by / construedjurisdiction / courtarbitration / arbitrator
令和5では、準拠法が「the laws of the state of New York」=ニューヨーク州法なのに、選択肢に「アメリカ合衆国連邦法」を混ぜてきた。state という1語を読むだけで2択が切れる。英文問題で唯一「本当に読む」価値がある種類のひっかけ。 おまけ:without reference to conflict of laws principle=「国際私法(抵触法)のルールは使わない」=指定した法をそのまま適用する、という意味。令和5・令和7の両方に登場した定型句。

3. 解き方の手順本番で3分以内に処理する

選択肢から先に読む。日本語の選択肢なら、英文を読む前に「これは仲裁の話か、準拠法の話か」を特定する。令和7年度は選択肢が全部日本語で、英文を一語も読まずに3つ切れた
英文はトリガー語だけ拾う。上のカンペの太字(governed by / arbitration / indemnify / unenforceable など)を探す。全文和訳は絶対にしない——時間が溶けるだけで加点はゼロ。
「誰が義務を負うか」を確定する。Seller か Buyer か。主語+shall の組み合わせだけ見る。令和4はここが正解の分岐点だった(Buyer が特許侵害の責任を負わされていた)。
迷ったら日本法の常識で切る。英文問題の誤答肢は、たいてい仲裁制度や独禁法の基礎知識だけで消せる(次章)。英語で迷っても法律知識で助かる設計になっている。

4. セットで出る日本法知識ここが本当の得点源。英文より配点が取りやすい

仲裁 vs 裁判 vs 調停(令和5・令和7で連続出題)
 仲裁裁判調停
公開性非公開原則公開非公開
審級一審制。不服申立て不可三審制。控訴・上告できる
判断の性質仲裁判断が下る(確定判決と同一の効力判決が下る合意しなければ不成立
判断者当事者が仲裁人を選べる裁判官は選べない調停人
外国での執行ニューヨーク条約の加盟国なら執行可外国判決の執行は難しい
誤答肢の作られ方は毎回同じ3パターン。①仲裁を調停と混ぜる(「話合いで合意できなければ不成立」→それは調停)②仲裁に不服申立てができると書く(→できない)③仲裁も公開と書く(→非公開)。この3つを潰すだけで、令和5設問19も令和7設問9も正解に届く。 ニューヨーク条約=「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約」。加盟国でなされた仲裁判断は、原則として他の加盟国でも執行できる。国際取引で仲裁が好まれる最大の理由がこれ(外国判決はこうはいかない)。令和5設問19の正解そのもの。 海外仕入れのある支援先に「揉めたとき、その判断を相手国で実際に取り立てられるか」を説明する場面そのもの。仲裁を選ぶのは、勝った後に回収できるから。
再販売価格拘束=独占禁止法(令和4設問20)
メーカーや卸が小売価格を指定して守らせるのは、独占禁止法の不公正な取引方法(再販売価格の拘束)にあたり違法となり得る。商法でも特定商取引法でも不正競争防止法でもない。 売った後の値段まで縛るのは独禁法」。英文契約の話に見せかけて、実は独禁法の1行知識を問うだけの問題だった。

5. 実戦 — 過去4年の実問題本番形式。解いてから答えを開く

Q1|令和6年度 第20問(配点約4点)
次の条項は、日本企業と外国企業との間で締結された英文契約において規定されていたものである。空欄に入る語句として、最も適切なものを選べ。
Article XX (   )
If any provision of this Agreement shall be held to be invalid, illegal or unenforceable, such provision shall be ineffective only to the extent of such invalidity, illegality or unenforceability, and the validity, legality and enforceability of the remaining provisions shall not in any way be affected or impaired thereby.
  1. Entire Agreement
  2. Force Majeure
  3. No Waiver
  4. Severability
▶ 答えと解き方
正解:エ Severability(分離可能性条項)
トリガーは invalid, illegal or unenforceableremaining provisions shall not be affected。「一部が無効でも残りは生きる」=分離できる=Severability。英文の意味が取れなくても、この2語の組み合わせだけで確定できる。他の3つは、完全合意(supersedes が目印)・不可抗力(acts of God)・権利不放棄(waiver)で、いずれもこの英文に該当する語がない。
Q2|令和7年度 第9問(配点約4点)
以下は、ある海外企業との販売基本契約書における紛争解決条項である。この条項に関する記述として最も適切なものを選べ。
Article XX(Governing Law and Dispute Resolution)
1. This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of Japan, without reference to conflict of laws principle.
2. All disputes ... shall be finally settled by arbitration in Tokyo, Japan in accordance with the Commercial Arbitration Rules of the Japan Commercial Arbitration Association. The number of arbitrators shall be three. Each party shall be entitled to appoint one arbitrator. The two arbitrators appointed by the parties shall select the third arbitrator.
  1. 仲裁手続は、中立的な第三者である3名の仲裁人によって当事者の話し合いを仲介することで紛争の解決を目指す手続きであり、当事者に紛争の解決に関する合意が成立しない場合には不成立となる。
  2. 仲裁判断は、当事者を法的に拘束するが、判断内容に不服がある場合には原則として裁判所に不服の申立てをすることができる。
  3. 仲裁手続は、日本商事仲裁協会の商事仲裁規則に従って、3名の仲裁人によって、英語で行われる。
  4. 仲裁手続は、日本の東京で行われるため、国際商業会議所の商事仲裁規則に従って、契約条項の定めにかかわらず、日本語で行われ、準拠法は日本法となる。
▶ 答えと解き方
正解:ウ
英文を一語も読まずに3つ消せる問題。
ア=×「話し合いを仲介」「合意しなければ不成立」は調停の説明。仲裁は判断が下る。
イ=×仲裁は一審制で不服申立てできない
エ=×契約は日本商事仲裁協会(JCAA)と定めているのに「国際商業会議所(ICC)」に、しかも「契約条項の定めにかかわらず」とすり替えている。当事者の合意が優先するという大原則に反する。
残ったウが正解。前章の「仲裁の誤答3パターン(調停と混ぜる/不服申立てできると書く/公開と書く)」がそのまま出ている。
※ウの「英語で行われる」は条文からは直接導けない(JCAA規則では仲裁言語は当事者の合意、なければ仲裁廷が定める)。この問題はウを積極的に選ぶのではなく、ア・イ・エを消して残す問題。英文問題で「正解の根拠が薄い」と感じたら、それは消去法で解く設計だというサイン——正解肢の完璧な理解を探して時間を溶かさないこと。
Q3|令和5年度 第18問(配点約4点)
米国ニューヨーク市に本拠を置くY社からの契約書案。空欄A・Bに入る記述として最も適切なものを選べ。
1. This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of the state of New York, the United States of America, without reference to conflict of laws principle.
2. All dispute arising out of or in connection with this Agreement ... shall be referred to and finally resolved by arbitration in New York City ... by the American Arbitration Association.
「1項は( A )を定めており、2項は( B )を規定しております。」
  1. A:本契約がニューヨーク州法に準拠し解釈される B:すべての紛争はニューヨーク市における米国仲裁協会による仲裁に付託され最終解決される
  2. A:ニューヨーク州法に準拠 B:すべての紛争はニューヨーク市の連邦地方裁判所の管轄に属する
  3. A:アメリカ合衆国の連邦法に準拠 B:米国仲裁協会による仲裁
  4. A:連邦法に準拠 B:連邦地方裁判所の管轄
▶ 答えと解き方
正解:ア
A:the laws of the state of New Yorkニューヨーク州法state の1語で「連邦法」の2肢(ウ・エ)が消える。
B:arbitration とあるので仲裁。「裁判所の管轄」の2肢(イ・エ)が消える。仲裁と裁判管轄は別物という第2章Cの区別がそのまま出題されている。
残るのはアだけ。拾うのは state と arbitration の2語のみ。
Q4|令和4年度 第19問(配点約4点)— 難易度は5年で最高
輸入販売にあたりY社(Seller)から届いた契約書案。自社(X社=Buyer)に不利な箇所は。
9. Seller warrants to Buyer that the Goods ... shall be free from defects in raw material and workmanship.
 Buyer shall indemnify and hold Seller harmless from and against any and all liabilities, damages, claims ... arising from or for infringement of any patent by reason of any sale or use of the Goods.
10. If Buyer terminates this Agreement and Seller has procured raw material ..., Buyer shall purchase such raw material from Seller at a price determined by Seller.
  1. A:商品につき売主が何らの保証もしない B:売主が決めた価格で購入する
  2. A:商品につき売主が何らの保証もしない B:原材料がすべて消費できるまで製品を購入する
  3. A:商品に特許侵害があった場合、御社が責任を負う B:売主が決めた価格で購入する
  4. A:商品に特許侵害があった場合、御社が責任を負う B:原材料がすべて消費できるまで製品を購入する
▶ 答えと解き方
正解:ウ
A:第9条の前半は Seller が warrants(保証する)と書いてあるので、「売主が何らの保証もしない」は誤り(ア・イが消える)。不利なのは後半——Buyer shall indemnify and hold Seller harmless ... infringement of any patent特許侵害の責任を Buyer(自社)が肩代わりする。売った側の特許問題を買った側が被るので不利。
B:第10条は at a price determined by Seller売主が決めた価格で買わされる。
教訓:indemnify の主語が誰かを見る。この問題は「保証がない」ではなく「保証はあるが、その直後に補償義務を負わされている」という二段構えで、主語の取り違えを誘う設計。第3章STEP3の「誰が義務を負うか」がそのまま得点差になる。

6. 直前30秒で見る要点試験当日、法務の開始直前に

 覚えること
方針選択肢から読む。全文和訳しない。3分で切り上げる
3点セットgoverned by=準拠法/jurisdiction・court=裁判管轄/arbitration=仲裁
条項名invalid…remaining=Severability/supersedes=Entire Agreement/acts of God=Force Majeure/waiver=No Waiver
主語Seller か Buyer か。indemnify・warrants の主語だけは必ず確認
仲裁非公開・一審制(不服申立て不可)・仲裁人を選べる・ニューヨーク条約で外国執行可。調停と混ぜる肢は×
小売価格の拘束独占禁止法(再販売価格の拘束)